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「キッスだけでいいわ」キックオフ


先の12月11日の水曜日、毎回お世話になっている板宿の立正寺さんで稽古をスタートさせたが、何時もの事だが、なかなか意中の俳優が揃わないのが悩みの種だ。特に、平日の昼間は働きながら芝居を創る私たちにとって本当にまいってしまう難題だ。

5日間7ステージを熟す私たち。土曜日と日曜日を除き、ゲネを含んで平日2日半の休みを取ることになる。この人は・・・・・・と思って交渉するも、意欲はあっても、その2日半の休みをとることが非常に難しいことで断念することになる。この繰り返しに、嗚呼、仕事以外の自分にとっての時間を見出しにくい状況とは、余りにも貧弱な社会じゃないかと思うことしきりである。

この間(6年)、どれぐらいの人に出演、或いは協力頂いたのだろうかと履歴を見てみると、50人近い人達が私たちの創造・公演に関わってくれている。

何方も個性的で、創造面で優れた力を持った方たちばかり。この「財産!!」を大切にしながら、諦めず、根気よく、キャスティングしていこうと考えている。

さて、「今度何やるの?」って聞かれて「キッスだけでいいわ」っていう演題なんだって言うと、大概の方から「ホ~、ラブロマンスなんや?」とか「ちょっとお洒落やんか」と返って来る。

とっつき易い題名そのままに、いまから35年程前の東京は池袋の下町の食堂が舞台で、その界隈で暮らす外国人労働者と食堂に集まる人達が繰り広げる人情噺で庶民的だ。「男はつらいよ」の山田洋次監督とよく作品を練って来られた高橋正圀さんならではの味があり、あの「寅さん、葛飾柴又」の情景を彷彿とさせるいい作品だ。

でも、根底に流れるものは骨太で、現在の社会問題に通ずる作品でもある。過去に青年劇場さん(全日本リアリズム演劇協議会会員劇団)が上演された社会派人情劇と言った方がいいかもしれない。

読んで、もう泣けて泣けて」と、私たちの劇団代表・高嶋さんが一押しの作品でもある。

総勢21名の登場人物で構成され。内二役が5名としても16名もの俳優に出て頂く事になり、眼を配る大変さもさることながら、日本語以外に英語、タガログ語が必要とくるから、此れまでにない新たな創造に挑戦する。

未だ未決定の役処を残しながらのキックオフにはなったが、「おはようございます!!」と二階の稽古広間に、見慣れた顔、初めての顔が次々に入って来る姿、「またこの時期がやってきましたね・・・・・・」とか、「よろしくね!」とか、「どうしてた!?」などとワイワイガヤガヤ話が其処ここで弾む姿。そして、ワクワクするような、でも一寸不安でもあるような、部屋は暖房がはいっていて外の寒さを感じさせないのだが、暖房がなくても身体が火照るような、一寸した高揚感でもって、来年5月中旬の公演に向けた稽古を始めることができた。

みんなで一つの作品を読み始めたときの感動は、何時もの事だが格別なものだ。

で、何よりも嬉しいことが稽古終了後の祝会で起こった。

「出演して欲しいのだが、駄目だろうなあ・・・・・・!?」と何時も思っていた男優がいて、旗揚げ公演の時に共演した高橋君だ。彼は、就職後も演劇活動をしていて、依頼される公演を結構楽しんでいるようなのだが、それ故、出てくれるチャンスはないだろうと思っていた。ところが、一昨年の私たちの公演「ディア・マイ・パパ」で出演してくれた大月君(今回も出演してくれる)が、常日頃、一緒に共演してみたいと思っていたらしく、彼に電話を架け、内諾を取り付けてくれたのだ。

出演依頼をし続けて一寸壁にぶち当たっていた時だけに、思わず大月君の携帯を借りて「本当に出てくれるの!!」ともう懐かしいやら、嬉しいやら、此れまでの苦労が吹き飛んだ嬉しい出来事だった。改めて此れまで積み上げて来た「ぷらっと」の宝物を、手に入った瞬間だった。

みんなでいいものを創り上げていこう思う。


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