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中川順平

昨日、稽古

今回、客演に参加してくれている劇団「なにわニコルソンズ」の吉見春人君がいる。

芝居が好きなんだなあ、と思う。今回参加の仲間に第5回に私の息子役で出演してくれた「劇団エクステ」の大月航君がいるが、彼らは双璧ぐらい芝居が好きなようだ。そして二人ともきっちりしていて、拘りを強くもっている。勉強になる。何より、「芝居」は?と熱く追及している。ちゃらちゃらしていない。


若い当時、よく演出にぶつかり納得できないと次の表現を創って見せた、それでも了解もらえないと、また次の表現、いろいろな角度から試していた。この二人、いろいろ考えて来る、昔営業マン時代に「表現は無限」という言葉を教えてくれた先輩がいた、要は営業先にアプローチの方法は、いろいろある、さらに提案は無限にある、ただどれが受け入れてくれる確立が高いかを探りあてその目標にぶつける、相手の思わない方法で、気付かない提案で、成し遂げた時、大きな収穫を得る、というやりかた。芝居も同じ、決まりきった表現を出す、そんな愚をしない、人の表現をみて「あれは違う」という者が時折いるが、思考が幼稚すぎる。


この日、春人が二幕二場の長セリフを滔々と語った。なんとも若いとはすごい、それだけで感動、当たり前と思う人いるが、当たり前じゃない、セリフの覚え方は人それぞれだが、ただパターンに入って、覚えた言い方や相手が代えてきても同じ表現のままという鈍感なものが多いなか、どんどん昇華しまるで役の人間が生き生きしてくるような語りを創れる役者、なんとすごい、思えばそのヒントは日常に落ちている、一杯。

普段どれだけ人の話を聞き、どれだけ深く考え思えるかが勝負になる。


なんか理屈っぽくなってきた。春人、航の若い役者に刺激をいっぱいもらってる、そんな思いを伝えたかったのである、それだけだ。


いよいよ…この芝居、セリフに愛があふれている。チラシデザインを担当してくれた、昨年秋に突然あちらに逝ってしまった小林正美君が、チラシを作るとき『タイトリングに、どうしても『ここには、愛が溢れている。』と入れたい、いいですか?」とこだわったのがよくわかる。


怒ってるが、叱ってる、冷たい態度が、温かい、だからこの場に、集まってくる、そんな時間と空間をもった芝居、それがこの「キッスだけでいいよ」なんだなあと…


よく話題にするゴーリキーの「どん底」、45年前に観た主役サーチンのエンディングセリフ「人間、なんてすばらしい奴なんだ、おまえは!」とうたいあげ、イチ、ニ、サン、の3秒後にカットアウト!  そののシーンを今でも思い出す。ぼろぼろ泣いた…。


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