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わが家の客 作・喩栄軍

須永克彦氏の偲ぶ会の折に、案内されていた神戸学院大学グリーンフェスティバル公演に

行ってきた。中国現代劇「2018年中国演劇ベストプレイに輝く喩栄軍の最新作と紹介の

作品である。

中山文さん(神戸学院大の准教授)の翻訳により、伊藤茂(同大教授)が台本化した作品、中山さんはこの戯曲を最初読んだとき、何回も泣いたという。是非これを日本で上演したいと切に思ったと。

静かに幕開き、500人ほど入るホールに観客は半分ほど。

人生に「もしも…」などないが、別の人生を歩んでいれば、と説明されている少し複雑化された作品、しかしなんとも「リーディング・シアター」という台本を読みながら進行していくこの長編、2時間少し、筋を追うのに苦労したが、だんだんとクライマックスになるにつれて観客が息を呑んでるのがよくわかる。夫婦連れが多い。

なるほど、観客には通なる客も多いのだなあと。みんな乗り出してみている。

一言でいえば、人生が違った3人の物語、大人の恋、というか大きな歴史に翻弄されたそれぞれの人生を編み出してもう一度その時に戻してそこからやり直す、しかし編み出すことができない事実、そういうもどかしさと人の慟哭、そんな芝居かなあと思ったが、そこには愛のもつ物語がからみ自分の過去にも迫る劇が想起され、深かった。悲しかった。この作家、若い作家と聞くが、なんともすごい作家なんだと感じさせられた。

まちがってるかもしれないが、3人の役者がそれぞれプロで、重厚かつ軽みがあり、スムーズ、泣きが少しおおいのが気になったが(泣かずに泣かせて欲しかったが)、セリフ劇、みんな流石に上手い。それにチェロ奏者、薄井信介という神戸学院大出身のプロのチェロ奏者、この人の間に入る叫ぶような歌とチェロの音が重厚で素晴らしい場面を作ってくれている。見事だった。その時間だけまるで別空間の様相を呈していた。

終って、みんなアンケートにいろいろ書いていて、帰る人が少ない。なんか伝えたいと客が思ったのだろう。

それは、自分の過去を想起させられ、人生は別の選択がないという現実を突きつけられて知った感動を書いてるんだろうと思った。ひとの数だけ人生がある、と云いたいかのごとく。

役者、いいものだなあと、林田鉄(四方館)、馬場晶子(道化座)、稲田喜之(千年座)の3人のコラボとアンサンブル、押さえた芝居がなんとも悲しかった。

こういう重厚でなんともやるせない芝居、いい作品だった。

昔、民芸の芝居「北一輝」の滝沢修の芝居を思いだしのだった。(2019・12・24 クリスマスの夕)

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