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山崎 勉

俳優の山崎勉が書いた「俳優のノート」という本の中に、セリフの覚え方の件(くだり)があって、今でも覚えている。山崎さんは、ずっと川の土手を何度も往復して覚えると。そこには、人の家が観客席であり、土手の道が舞台、少し大きな声を出してもいいし、それによく通る。気持ちもいい。少々、顔ゆがめても誰も見ていない。体力作りにもなるし、また気分転換にもなる。たまに土手下に

おりてきて、昼寝とか。なるほど。でも俺には土手がないしなあ。

で、彼の覚え方の一つに、他の人のセリフを自分で吹き込む、それも相手役のセリフをしっかり真似て録音する、「間」もきっちりと。一字一句しっかりと覚える。特に彼がやった「リチャード三世」のときなど、あの長科白を何往復しながら覚えたと。

今、私もその方法をとっている。時間は駅までの往復、練習は1日で3回ぐらいできる。夜などは特に酒など入ってるとつい大きな声でやるもんだから。窓、ガチャンと締められたことがあった。しかし集中できる。

仲代達也さんは、いつも一人で自宅でらしい。奥さん(演出家)を亡くされて一人でやってる。テレビのドキュメントでやっていた。覚えるべきセリフを墨で大きく書いて、もう壁から天井、トイレやら廊下やらに貼りまくっている。

名優が人にみせない水面下での努力、まあ、俳優なんてのはこの時間が楽しくて楽しくてなんだけどねえ。言葉では「セリフが覚えられなくてねえ」なんて言ってるが口元は「こんな楽しみ、他の人間や演出家に邪魔されてたまるか、まして女房のような素人にこの秘かな楽しみ、とられてたまるかと、昨年650ほどのセリフがあって、赤い脂汗がでたあの「ディアマイパパ」のときに知った、まるで宝物を隠してるのを悟られないように…

ただ、セリフは生きたものでないといけない。覚えたらいいのではない、粗で覚えて相手の出方で変える、それが正しい。でないと一人浮いてしまう。私は変えない、覚えてないあなたが悪いのでしょう、みたいな人もいるがそれはおかしい。セリフ、言葉は生き物なんだ。

山崎勉の姿勢で有名なのが、「再演芝居にはでない」。

若いときから決めているらしい。

その解答がこれ「生き物」でなくなるから。

わかる、わからないと芝居なんてしてはいけない。それは興行だあ。

セリフ、ただ、未だ覚えてこなくて回りに迷惑変えてるにもいるがこれもどうかなあ、生き物を吐いてるようにも思えないがなあ。 まあ、いずれにしても、セリフを縦横無尽に駆使して人間を表現する、これが芝居の醍醐味、だよなあ。セリフ覚える覚えないなんてのは基本の基、人間がでてるかどうかだなあ、N君、Nさん、Aさん、Tさん…( J )

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