豊岡市の市長選挙にて、中貝市長が負けた。思えばこの人の名前を知ったのは、小豆島市長の塩田市長と公演後に飲んだとき、知ったのだった。この市長は京大をでて官僚になり、乞われて古巣小豆島町の市長になった。偶然に同年だった。タイトルは忘れたが平田オリザさんが書いた「日本が下り坂…」の本にも話題の市長として紹介されている。その本の中に、この豊岡の市長も紹介されている。そして世の中にはこんなにとんがった発想する市長もいるんだと。
中貝市長は元豊岡の市役所の職員、そして20年ほどまえに、地元豊岡の人口減少を食い止めたくて市長選に出馬、当選し4期連続市長を。5選の今回「演劇の町なんかいらない」と訴えかけた相手に負けたのだった。その敗戦のコメントが神戸新聞にも載っていた。
「住民の理解を得れなかった」と。新聞の調査では、「この町に演劇はいる」に30%、「いらない」が26%、だったが負けた。日本で稀有な町になる可能性を閉ざすことになった。
かえすがえすもザンネンであるが、市民の声が「反対」というなら、従わなければならない。それが民主主義である。一票でも多いものが勝つのである。多数決である。
コウノトリの人工ふ化を実現し(その前からこの件はプロジェクトができていた)、さらにカバンと城崎の温泉だけでは将来若い人が住まなくなってしまうと危機を抱いた当時40才ぐらいのこの中貝市長が「演劇」というどこにも発想しえない思い切ったエッジの効いた「町構想」をもってでてきたとき、世間は知らん顔だったようだ。しかしと当選、そして国立大学の「芸術大学」を新設構想、劇団「青年団」(主宰平田オリザ)の劇団員が東京から、家族みんなで移住、などなど驚くような実績をつくりいよいよ稼働(2021年春大学は開校、学長はオリザさん/劇場は昨年夏、コロナ下の中でこけら落としを済ませた)、すでに全国からこのコロナの中、多くの人が観劇に訪れている。そして世界演劇祭がこの秋開催の予定だが、今度の市長は「予算はあまり割けない」とそっけない意見であった。
「演劇の町構想」は頓挫した。今日の新聞に前市長は「一市民として今後関わっていきたい。だがもう二度と政治にはもどらない」とも発表していた。
ザンネンである。「演劇」というテーマはそれほど無力なものなのかと。 (順平)
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